tsukune32

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無情も嵐も踏み越えて (5)

 エミルとレラが叫ぶのと、ほぼ同時に。  無数の火炎弾と、かまいたちに似た空気の刃が、空中や魔道士達のかざした掌から、カーレルに向かって連続で発射された。が、それは未だに効力を失っていなかった金色の光の壁によって、微動だにしなかったカーレ...
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無情も嵐も踏み越えて (4)

 考えてみれば今夜どこかに泊まる算段もしていない、というエミルに、仕方なくカーレルは、「今夜一晩なら部屋で寝かせてやる」と言い、連れ立って食堂を出た。 「ただし床で寝ろよ。あ、ちなみに余分な毛布もねえからな。そのへんはてきとーに自分でなん...
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無情も嵐も踏み越えて (3)

 エミルは呆然としていた。並んだ皿の上から次々に消えてゆく、料理の量とスピードに。  カーレルが自宅がわりに滞在している安宿「こんな宿もあるさ亭」から、徒歩でしばらく行った先にある、薄汚れた食堂である。幾つかのランプで照らされただけの、薄...
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無情も嵐も踏み越えて (2)

 エミルはまさに針のむしろに座る心地で、ギシギシという軋みを発する粗末な木製の椅子に腰を下ろしていた。 「いったいどうしてくれんだよ、ええ?」  借りてきた猫のように身を小さくしてうつむいている少年の前には、古ぼけたテーブルを挟み、同じ...
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無情も嵐も踏み越えて (1)

「あなたが、有名な凄腕の黒魔道士《魔剣グラム》さん、ですか?」  小春日和というにまさにふさわしい穏やかな晴天の下、小鳥のさえずりものどかな昼下がり。  なけなしの金銭をはたいて、行きつけのパン屋「クィーンメリー」から食料を調達してきた...
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プニプニパニック ~そして街は戦場になった~ (後編)

 その日の夕方。  奇妙なものが、シャザレイム城下町の郊外の森を移動していた。鮮やかな朱金色に染まった空の色を、つやつやの表面に照り返す、プニプニの集団である。  その大行列は街の城門からずっと続いており、そして行列の最前列を、幼児を引...
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プニプニパニック ~そして街は戦場になった~ (中編)

「どぅうわぁぁあああっっ!!」  絶叫。まろぶような足音。何かが倒れる騒音。そして、それらのすべてを飲み込む圧倒的質量感を持った何かが、低くどろどろと押し寄せる物音……。 「ひいいぃぃぃぃーっ!!」  あらん限りの空気を肺の中から搾り...
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プニプニパニック ~そして街は戦場になった~ (前編)

 エミル少年の、魔法における師匠である黒魔道士カーレルには、奇抜な、というよりも奇特な知り合いが多い。 「……あれ?」  その日の夕方近く、バイト先の食堂兼居酒屋「ドラム・カン」からの帰宅途中。エミル少年は道端で妙なものを見つけた。...
優しい月-Missing link-

優しい月-Missing link- (6) -完結-

「朔ってさぁ……何歳?」  なんとなく、麻奈は切り出す。  本当はもうこの世に存在しない少年。五年も前に、彼を知る全員の前から、突然姿を消してしまった少年。  彼に何があったのだろう。  その問いかけに、朔は小さく小首を傾げた。幽霊...
優しい月-Missing link-

優しい月-Missing link- (5)

「遠藤くん」  と、その夜も窓のノックと共に訪れた朔に、麻奈は呼びかけた。 「……て、いうんだね。どーりで名前に覚えがあると思った。街中大騒ぎだったもん、あのときは」  いきなり呼びかけられた朔は、明らかに驚いた顔をしていた。  し...