優しい月-Missing link-

優しい月-Missing link-

優しい月-Missing link- (6) -完結-

「朔ってさぁ……何歳?」  なんとなく、麻奈は切り出す。  本当はもうこの世に存在しない少年。五年も前に、彼を知る全員の前から、突然姿を消してしまった少年。  彼に何があったのだろう。  その問いかけに、朔は小さく小首を傾げた。幽霊...
優しい月-Missing link-

優しい月-Missing link- (5)

「遠藤くん」  と、その夜も窓のノックと共に訪れた朔に、麻奈は呼びかけた。 「……て、いうんだね。どーりで名前に覚えがあると思った。街中大騒ぎだったもん、あのときは」  いきなり呼びかけられた朔は、明らかに驚いた顔をしていた。  し...
優しい月-Missing link-

優しい月-Missing link- (4)

「麻奈は、大学にはいかないの?」  朔にある日、何気ないように尋ねられた。どうしても学校のことが気になって、今授業はどこまで進んでいるのだろうかと、教科書をぼんやりとぱらぱらめくっていたときのことだった。 「……わかんない。あたし、ヒキ...
優しい月-Missing link-

優しい月-Missing link- (3)

 翌朝になっても、麻奈の家は冷え切ってガランとしていた。  パジャマ姿のまま、雨戸が締め切られて暗いリビングに降りていくと、テーブルの上に一枚のメモといくらかのお金があった。  仕事が忙しいことと、しばらく帰宅できないという内容の母親の...
優しい月-Missing link-

優しい月-Missing link- (2)

 自宅に着いたら、あと二時間ほどで日付が変わるというくらいの時間になっていた。  住宅街の中にある、ごく一般的な一軒家の窓には、しかしひとつも明かりは灯っていなかった。  暗く沈んだその光景を見て、麻奈は気分がすとんと沈み、それで自分は...
優しい月-Missing link-

優しい月-Missing link- (1)

「やめた方がいいよ」  そんな声がいきなり、まったく予想もしなかった方向から聞こえてきたとき、麻奈(マナ)は意表を突かれすぎてろくに反応もできなかった。  秋から冬へと、季節が移ろいつつある夜。半月より少しふっくらした感じの月は綺麗だが...