半蔀ひとつない、暗い、板敷きの間。
几帳がひとつだけ立てられたその冷たい場所に、神楽は黄金の太刀を抱いたまま、独り座り込んでいる。
りーーーん……
太刀の柄に下がった金の鈴が、揺れもせずに、鳴る。
指をふれさせてもおらず、風も勿論ない中で。
ただ鈴は、闇の中で鳴り響く。
りーーーん……
「私を、呼んでいるのですか……」
りーーーん……
「苦しいですか。哀しいですか。私を誰より憎み、さぞかし怨んでいることでしょう」
りーーーん……
りーーーん……
りーーーん……
問いかけのひとつごとに、鈴が、鳴る。
神楽は僅かに首を傾けるように、胸に押し抱いた黄金の太刀に、白い頬をふれさせる。
白い瞼の閉じられたその貌は、生者というより、死人のようだった。
「哀れなものですね……」
黄金の太刀を抱いたまま。くすくす、と、神楽は笑みを零す。
さらさらと落ちかかってきた肩までの黒髪が、その青白い頬と、青白い首筋を隠す。
りーーーん……
また、鈴が、鳴る。
冷たく昏い闇の中、神楽は、いつまでもくすくすと笑い続ける。鈴を転がすような、軽やかな声で。独りきりのまま、いつまでも。