世界には、天地を支える五本の柱がある。
それは天をも凌ぐほどに高い山、数えて五山であることから「天凌五嶽」と呼ばれ、天地を繋ぐこの五山を通して、世界を循環する陰陽の氣は巡っている。
五つの聖嶽は、東西南北に一嶽ずつ、中央に一嶽。四方それぞれには方位を司る四夷神が住まい、世界の中心にある一嶽には、五本の柱と四夷神を統べる最高神が住まう。
氣は万物に宿り、「陽氣」とは生気、「陰氣」とは死気を指す。
陰氣は地に還り、陽氣は天凌五嶽を通じて天に還り、ゆるやかに巡るその流れによって世界は保たれ、死滅と再生を繰り返す。
然るにこの天地の則は緩み崩れやすく、どちらが勝りどちらが劣っても、天地の均衡は狂いを生じる。狂いからは魑魅魍魎が生じ、其れらは「蚩い鬼」、シキと称される。
横行する魑魅魍魎に、最も高い場所におわす神は、神でも魔でも人でも獣でもない者達を作り、陰陽を御する「破天の力」を持つ神器を与え、乱れた氣を御する裁定者とした。
陰陽の氣を持たない彼らは天地の則から外れ、自身の命を持たず、神器に宿る神の力によって不滅の時を過ごす。
神でも魔でも人でもない此れらを、「天魔」と呼ぶ。